4,768mの峠越え:双橋溝からピンプン溝(Bi peng gou)へ


2007年8月11日
 双橋溝の王さんの宿を車で発ち、車道の終点、三年前に登った懐かしの牛心山(Niu xin shan)の麓の紅杉林(ホンシャンリン)へ。土産物屋が建ち並んでいた。ここで村の人たちにポーターをお願いし、双橋溝を詰めていく。8:00頃出発。かつてベースを張っていた辺りの近くまで、真新しい木道が出来ていて、以前とは大違いだ。楽勝で登っていく。途中、妹尾と先行して道を間違えて藪こぎをしたりしたが、そのうち一行と合流する。好天の中、「北国の春」のメロディーで「シンクラ〜、シンクゥラ〜(お疲れさま)」と歌っていると、村人たちもそれに唱和したりした。また、ポーターの方々が時折、「アピ、アピ、アッピッピ」と言って笑っているので何のことかと思ったら、大内和子さんのニックネームを近くの「アピ山」にちなんで付けていたようだった。
 11:00に4,768mの峠に着く。少しガスも湧いてきたが、牛心山の三角に尖った北壁や、懸垂氷河をまとったアピ山、兎峰の高み、が見え、花も沢山咲いていて、気分がいい。先頭パーティーと共に、大きなガレ場を、ピンプン溝(Bi Peng Gou)へと下っていく。下るにつれて、女王峰(Nu Wang Feng:5404m)や将軍峰(Jiang Jun Feng:5260m)、そしてたくさんのピンプン溝添いの峰々が望まれてくる。なお、将軍峰については、なんらかの記録が存在しているようだ。
 ガレを過ぎ、草の急斜面を下ると、小さな滝の架かったすてきな水場が現れた。先行していたポーターの方々はそこで荷物を置いて一休み。しばらく休んでいると、若い何人かが英語で「I'll return.」とか言い出した。「Our camp is there!」と言って、遥か下の草原を指さしたが、「いや、ここがベース地だ」といったことを言っている。そのうち、「I'm hungry.」と言って、数人が荷物を置いたまま帰っていった。他の大人の村人にも帰りかけた人がいたので、「私たちのベースキャンプはあそこだ!」と下の草原を指さして引き留めた。とにかく、後ろから来ている人たちと再び引き返して来るだろうと一時間以上待っていたが、なかなか帰ってこない。結局、残った大人の村人たちで荷物を分担しなおして、ベース地を目指すことになった。
 延々と斜面を下り、16:00頃、ベース地の大草坪(da cao ping:3840m)に着く。テントを設営し、しばらく待っていると、全員がそろった。しかし・・・コックの清さんによると、食料とガスがほとんど無いとのこと。予定では、明日、ピンプン溝入り口から、後発隊の小川淳司、橋井参二、YCCの佐野耕司、船山和志、川野健二、朝岡隆、雪豹体育探検公司の姜峰さんなどが、食料などを持って入山してくるはずだ。それまでの辛抱だ、と一同、夜を迎える。



双橋溝の車道の終点、紅杉林(ホンシャンリン)。2002年、全てはここから始まった。
紅杉林から見上げる牛心山。私たちのルート「夏の雪豹ルート」も見える。




今年は立派な木道が出来ていた。
工事をしていた人の話だと、アピ山の氷河の方までつながる予定とか。




道を間違えて藪こぎをしていたら、途中で見つけた小屋がけの跡。
どんどん谷を詰め上がって行く。




牛心山も形を変えていく。
峠は前方。たびたび小止(シャオシー:小休止)。




天気も素晴らしく、足取りも軽い。
ここもまた、お花畑。




牛心山北面。





アピ山を背景に峠を登る。





牛心山北面。いつかはここにもルートを拓きたい。





兎峰。この辺りでは一番高い方の山の一つ。





牛心山とアピ山。













もうすぐ峠。
牛心山北壁。




越えてきた谷。





峠。





ピンプン溝へ下る。
ガレ場を過ぎると、お花畑。




お花畑と将軍峰(撮影:大内尚樹)。





花々に包まれて峠を下っていく(撮影:大内尚樹)。
大内和子さんと尚樹さん(撮影:大内尚樹)。




ダイオウの葉を日よけに被る王さんの弟さん(撮影:大内和子)。
彼は薬草採りもしていた(撮影:大内尚樹)。




途中の、草付きと岩場の急斜面の水場。ここでポーターの人たちの何人かが帰ってしまった。
さらに花の咲き乱れる斜面を、草原に向かって下っていく。




ピンプン溝の突き当たりに聳える、盟主、女王峰(5,404m:未踏)。





女王峰の右岸下手、YCCの方々が目指す将軍峰(5,260m:未踏)。





その下流の山々。これらもほとんど未踏峰。















もうすぐ大草坪!(撮影:妹尾佳明)。





ベース地の大草坪に到着! そこから下流に見える峰々。





左岸には、燕子涯の奥に、私たちの目指す、5,513m無名峰(未踏)が顔をのぞかせている。



2007年8月12日
 天気がいい。峰々が素晴らしくよく見える。私たちは後発隊を待って停滞。ポーターの方々は車座になってトランプ遊びに興じていた。食事が乏しいので、朝は、お粥と少々のおかず、ふりかけ等で過ごす。昼は、大内さんが、山菜料理を作るということで、「そんな草は食べられないよ」などとポーターの人たちがからかう中、草原の野草を集めた。しかし油もガスも乏しく、思うような料理は出来なかったようだ。午後になってくると、降ったり晴れたりめまぐるしい天気になった。ポーターの人たちが木陰でたき火を始めたので、一緒にあたる。待望の後発隊は夜になっても到着しなかった。私たちは簡単な夕食を済ませたが、ポーターの人たちは何も食べずに寝たようだった。「何もなければいいが・・・」後発隊の心配と明日の食事の心配が募った。それに、通訳できる人が誰もいないのも心細い。



大草坪(da cao ping: 3,840m)のベースキャンプ。左が将軍峰、右が女王峰。





ピンプン溝(Bi peng gou)鳥瞰図。


1:5,513m無名峰
2:燕子岩
3:双橋溝への峠
4:女王峰
5:将軍峰
6:長坪溝への峠




上流から望むベースキャンプ(撮影:大内尚樹)。





放牧された馬が遊ぶ。
山菜を料理する、植物のプロ、大内隊長。




暇ができると、トランプに興じる、ポーターの村の人々(撮影:大内尚樹)。
お洗濯に興じる?人も(撮影:大内尚樹)。




たき火。
火を絶やさないようにあたる。





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ピンプン溝(Bi peng gou)・5,513m無名峰