台北の緑(平成183)        

  望月浩平

1. レンギョウ

 

 石垣島の風景で印象的なのは、木々の緑色が本土よりずっと濃いことで、これは、気候の違いに由来するが、当然台湾においても連続する面がある。山がちの台湾では、さらにせり上がる光景になり、日光に輝くにしても、悪天候に揺れようとも、大きく厳しい所与の条件を形成する。思うに「如何に死ぬか」は答え難いにしても、「如何に活きるか」は所与の条件に大きな影響を受けるものだ。新しい道を探すにしても、限定された条件の中で最善を尽くすのみである以上、どこか似通ったものに目がいきつつも、どうしようもない違いに気づくことも多く、そのバランスの取り方が人間を生きる実態なのかもしれない。

 前置きが少し長くなったが、旅行の条件は1年前とあまり変わらない以上、それほど変わったことができるわけではなく、3歳になった佑滋を引き回すのは大変なので、台北中心に回ることになり、台北動物園で1日取り、後は温泉と買物という計画になった。ただ224日に川西能勢口のHIS営業所に行くと去年乗ったエバー航空の便は満席で取れなかった代わりに、往路で朝の大阪出発が早く、復路の到着の遅いキャセイ・パシフィック航空の便がほぼ同料金で手配できたのは幸運だった。昨年は3/2427206840円だったが、今年は3/294/1204640円の4名分。団体用にたくさん仕入れていたためらしいが、都合がよいのは悪いことではない。インターネットの旅行サイトでは1人あたり6万円程度だったので早速手を打ち購入する。なお最終的な総費用は約29万円で、前回の約28万とほぼ同じだった。

 329日は1115分関西空港発のキャセイ航空CX565便なので、2時間前に到着するように逆算すると、日生中央出発は通勤に使う640分始発の梅田行き特急。5時に起きて荷物を纏め佑滋を起こし5時半に丸山台を車で出て、美山台へ下りていく。車を返しに丸山台に上がる。今年のモクレンはまだつぼみのままだが、レンギョウは黄色く咲いている。

 母に朝食をご馳走になって、玄関前で記念撮影後日生中央まで一緒に歩く。相変わらずベビーカー持参。現在、日常的には使わないので軽量化で省略する考えもあったが、結果的に本人が疲れるとどんどん乗って大いに役立ち、乗らないときは荷物運びにも活用。身体が大きくなった分、ベビーカーが縮んでちんちくりんに見えないこともないが、本人はいたって平気で矜持を全然感じないのは父親に似ているというべきか。

 先頭車両に乗車しようとすると、向かいの家のご主人が座っているので敬遠し場所を変える。春休みで乗客はそれほど多くなく、梅田到着722分。2階出口から大阪駅御堂筋口へ。阪神梅田近くの地下街のチケット屋でJR回数券購入。関西空港まで1100(定価1160)、新今宮まで165(170)、川西池田までの昼間回数券が200(320)。いつも買う北新地駅に近い駅前第2ビル地下2階の店では、それぞれ1080円、160円、190円のはずだが、早朝は営業しないので仕方ない。7時台は関空快速が7時半の1本だけ、今回は新今宮までJR、そこで乗り換え南海電鉄で関西空港へ向かう。744分の区間快速奈良行きに乗車。天王寺までは各駅停車だがかなり混雑。新今宮から関西線に入り、いつもと開くドアが変わる。南海電鉄の新今宮で関西空港まで切符購入し890円。ちょうど84分の空港急行関西空港行きが出たところで、次の820分の急行までホームで待機。難波に向かう空港特急ラピートが通りビデオ撮影。今回も同行する妻の母に電話すると予定通り守口市からのリムジンバスに乗車中。いつもより早く関空快速が利用しにくいので関西空港合流予定、改札口で待ってもらうように依頼。

 南海電鉄は5年前の「扶余の春」以来、久しぶりの利用。南海本線との分岐駅の泉佐野が高架化。両側の扉が開き和歌山方面からの乗り換えが便利になっている。空港線は1時間あたり空港急行3本とラピート2本のダイヤが、昨年11月に空港急行2本、空港普通2本、ラピート2本に改正され南海本線の急行との接続も取る。時間が早いから単純に比較できないが、JR関空快速より途中駅からの乗降が多く、混んではいないが空いてもいない。関西空港到着は9時過ぎで、改札口で4人全員集合し4HISカウンターへ向かう。

 航空券を受領しキャセイ航空のカウンターへ向かうとかなりの行列。ベビーカーのゲート預けの手続きをして、佑滋のチャイルドミールを確認して出国審査へ向かうとこちらも行列。1045分ゲート集合。その前にベビーカーを預ける必要があるため、1030分にはシャトル乗り場に向かうことにしてそれまで妻と母は免税店へ。佑滋は最初書店で好きな本を探したが、その傍若無人な態度に付き合いきれずキッズルームへ連れて行く。親の顔が見たい!見たくない?3回目になると入口で消毒後、奥のカーペットで靴を脱がせ馴れたもの。先客の母と年上の男の子は部屋際の椅子に座り本を読む。広くない床とカーペットに座り込み、玩具と絵本に取り組む佑滋とかち合わずに済み幸いだった。

 

2. 台北市内へ

 

 シャトルに乗って中間駅からゲートに向かうと、前はたしか売店にすぎなかった所が免税店になり商売気が増す。台北経由香港行きのCX565便はほとんど満席。佑滋と一緒だと優先搭乗でき荷物置場を確保。1115分定刻に離陸。機内誌には第二次大戦の軍人パイロット上がりの創業者により始められた会社の歴史が記載され興味深い。佑滋にはすぐにチャイルドミールとディズニーグッズの文房具入りリュックをもらい、鉛筆を削ったり塗り絵をしたりして遊ぶ。2時間ほどはもったが、最後の1時間は通路に出て機内を一周。カーテンで区切られたビジネスクラスの方へ向かうのを何とか止めて、もと来た通路を引き返す。大声で「一周する」と言ったので、妻の座席からも声が聞こえたらしい。

 母は機内免税品販売に関心がある。価格が米ドルと香港ドル表記なので交換レートがいくらか訊かれて、機内配布の日経新聞で調べて示す。途中揺れでシートベルト着用サインが出たので、着陸20分前近くになって係員に聞いて支払いのクレジットカード返却が遅れる。135(日本時間145)に台北から西に40km離れた桃園市にある「台北中正国際空港」着陸。大きな青天白日旗が掲揚。ゲートが一杯で降りるまで時間がかかる。香港行きの便だがほとんどが飛行機を降りる。香港までの乗客は機内に残るか、機外で待つか選択できるが、トランジットの札をもらった人は見ている限り1人だけ。何のために見たかというと、ゲート預けのベビーカーを待っていた。免税店前を通り入国審査場までベビーカーを押して進む。日本人はトラピクス阪急交通社のワッペンをつけた人が多い。前回のエバー航空は第2ターミナル発着だが、今回のキャセイ航空は第1ターミナル発着で、様子が違い銀行の位置がわからず戸惑い、最初は計程車(タクシー)乗り場の方に進む。反対側のバス乗り場に向かうと少し窪んだ位置に中国国際商業銀行を発見。4万円を10724元に両替。空港では手数料が20元含まれるが、1元が3.73円の勘定になる。

 台北市内へのバス乗り場は、さらに進んだファーストフードコーナーの先で、1345分の大有巴士(バス)[air bus]西線が先発。切符売場のおばさんが「出るよ」と言って呼んでいる。Taipei stationと言うと1100元で3300元。1000元出すと700元お釣りで行李證[baggage tag]と日本語地図を3枚ずつくれて発車間際のバスに向かって声をかける。先に3人が乗り込み、トランクに荷物を入れると、ベビーカーが折りたたまれず、積み込みに手間取るとバスの扉が閉まって慌てる。係員が折りたたまずにトランクに入れて無事出発。

 台湾は韓国と同じで道路は右側通行。大有バスは前回の国光バスと違いすぐに高速道路に入らず、南崁まで一般道路の停留所に停まり、乗客の乗降で時間がかかるがその分街の風景がよく見える。道路沿いにはビンロウ売りのスタンドが多い。なぜ若い女性がよく立つのか妻が訊くが、商品が同じなら買い手の運転手(男性)の購買欲をそそり、競争に勝ち抜くのだと説明。高速道路に入ったところで下をくぐる石炭貨物列車が見える。高速道路のさらに上を高架で通る台湾新幹線の軌道には架線がかかり、10月開業が近づいている模様。料金所では一般車は長い行列だがバスはETCレーンをノンストップ通過。

 台北市内では前回同様に淡水河を渡ると重慶北路へ入り、最初に啓聡学校前で停車。庫倫街へ左折し実在した医療の達人を祀る保安宮を北側に見て、台北捷運(地下鉄)MRT(mass rapid transit)が高架に上がる円山車站()の下をくぐる。中山足球(サッカー)場を横に見て中山北路へ右折し、大同大学前から台北駅へ南下。街路樹の緑が濃く存在感がある。台湾鉄路(台鉄)・台北駅前の新光三越が入ったビルが抜きん出て高く目印になる。15時に前回と同じ台北駅の東側で停車し荷物を降ろす。あまり下りる乗客が多くないのは次の総合バスターミナルまで向かうためか。気温は20℃を越え天気は曇りで出足は順調。

 佑滋をベビーカーに乗せ、台北駅ビルに入り、下りエスカレーターで地下街へ。佑滋の体重は17kgになり持ち上げて運ぶと重い。本来は大きすぎるが、歩かなくて楽だからか抵抗なくベビーカーに乗る。東西へ台北を横断する忠孝西路の南側に上がるエスカレーターを探し、MRT台北車站駅付近へ。エレベーターを見つけるが改札口へ降りる下り専用。すぐ近くにやっと上りエスカレーターを発見し補習班(予備校)の多い南陽街へ上がる。

 新光三越のライオン像の前を通り、昨年泊まった華華大飯店へ。漢口街との角に本館が見えるが、今年は妻の希望で向かいの新館へ。知らぬ間に通り越し、大通りの重慶南路を渡ってしまい、さすがに気づいて引き返す。別館入口は通りから一段下がった自動ドアの向こうにフロントとエレベーターがあるだけなので見過ごした。

 J-pop女性歌手、多分紅白で聞いたはずだが名前は不明の曲が流れるフロントで、女性係員に「予約ありますか」と尋ねられ、「ない」と答えると、4人の顔を見て3200元の部屋を紹介。「部屋が見たい」というと、エレベーターで8階へ行くように指示し館内電話をかける。8階へ上がるとエレベーターホールの向かいが吹き抜けで、その右隅が882号室入口。すぐに係の別の女性が来てカード式の扉を開ける。中は広くダブルとシングルのベットが向かい合わせに並び、シングルの隣が大きなソファで冷蔵庫の上にテレビが乗る。去年より大きくなった寝相の悪い佑滋がベッドで暴れると、両脇に寝る妻か自分がカーペット敷きの床に落ちる懸念があるが、それ以外に不都合はないので、泊まることに決めて1階に戻る。前払いと言われカード決済。1530分にカードキー2枚に隣のドトールコーヒーで使用する朝食券を3枚受領。

 荷物を整理すると、今日の予定の買物。先ほどの行程を台北車站まで戻る。まず100元札を兌換機で50元硬貨2枚に両替し、隣の券売機で?切符の値段20元、?枚数3張の順でボタンを押すと画面に「20*360」の表示が出るので、?硬貨2枚を入れると、?カード型の乗車券が1枚ずつ出て、?おつり10元硬貨4枚が返却口へ。乗客のほとんどはICカードを使い、券売機は空いている。韓国と同じバー回転式の自動改札機を通り、右側通行の島式プラットホームへ。駅ホームは基本的に上下線の中央部にあり、韓国の地下鉄に多い方向別改札でない。とりあえずホームで列車の方向を確かめればよい。台湾では台鉄もMRTも日本と同じ左側通行なのがありがたい。韓国では方向別改札の上に地下鉄は右側通行が多く、間違えると乗車できないショックがある。時刻表はないが、天井から下がる画面に次の列車まで何分か表示。電車が近づくとホームの縁に埋め込まれた赤ランプが点滅。線路幅は1435mmでパンタグラフのない第3軌条集電方式、電車は20m級6両編成で銀色車体に青帯、電車好きの佑滋も結構喜んでいるようだ。1620分、MRT板南線で忠孝復興へ。板南線の板は台北の西隣の板橋市、南は東側予定終点地点の南港を示し、台北の東西を横断する重要幹線にあたる。

 次の駅は善導寺。2006年センター試験倫理にも出題された善導は浄土宗の開祖とも言える存在で、善導寺は日本時代に移入された本願寺系仏教との関連が指摘できる。駅間距離は約1kmですぐ忠孝新生、新生北路・南路との交差点。3つ目忠孝復興で下車。南北に走る復興北路・南路の上を高架で走る無人運転・新交通システムの木柵線乗り換え。長いエスカレーターで地上に上がり、さらに反対方向動物園行きの対向式ホームに出るため、ゴムタイヤ車両の通る軌道の上を渡り中山国中行きホームへ。軌道はホームとホームドアで区切られる。車両はフランス・マトラ社製4両編成で1両の長さは12.8mの小型車。先頭車両に乗ると展望よし。最高時速80km、直線軌道ではかなりのスピード感。復興北路を北上、南京東路駅を過ぎ1650分、中山国中(中学校)終点。台北盆地の北側・陽明山が近づく。係員がすぐ車両に入り、乗客下車を確認すると扉が閉まる。延びた軌道に回送車が何編成か停車。路線はさらに国内線発着の松山空港を経て延長予定。自動出札機でカード乗車券回収。

 復興北路西側に出て、前回寄った書店「三民書局」前を過ぎ、東西に走る民権東路との西南角の地下が前回も行った台北市内唯一の「昇恒昌(エバーリッチ)免税店」。妻と母には用がある。夕食を前回行った永康街にすると、まずバス停の下見が必要。1人で民権東路中央のバスレーン上にある「民権復興路口」バス停へ。新交通高架下の横断歩道を渡り、さらに信号が変わると直角方向の道路中央北側にある安全地帯のバスレーンまで進む。歩行者信号の時間は韓国より長く、残り時間秒数と緑色の歩行者が動画表示され、あと数秒で走り出す。たくさんバスが東西へ通るが、バス経路番号板を確認すると505番のみが適合。市内地図に主要バス路線を明示するのは『わがまま歩き台湾』実業之日本社(2004)の特徴。『個人旅行台湾』昭文社(2006)では主要バス系統が文章紹介で、別途地図で確認する必要がある。短時間に同系統を何回も見るが、505番は1回も見ず、実際の運転間隔には差があるようだ。バス前面には系統番号と起終点が漢字表示。様子はわかるが途中停留所や運転間隔などの詳細はわからない。 

信号を1本戻り、西側のセブンイレブンに入ってバス路線案内を探すが見つからない。そこでもう1本信号を戻り新交通高架に面した「三民書局」に入る。ここは前回Lonely Planetのガイドブックを探しに入ったが見つからなかった所で、地下1階から地上3階まで本屋が続く。最上階の隅に旅行関係の本が並び、台湾以外の諸国版のLonely Planetのガイドブックを見つけ、さらに探すと定価200元の『大台北公車・捷運指南』を発見。厚さ2?縦横20×10?のビニール包装で少し重い。中は確認できないが、他にないのでレジに持っていくと、先客の若い女性が2000元ほど日本語学習書を購入しカード支払い。英語と日本語学習書も多く、日本文化関係書もかなり並ぶ。こちらは現金で払うと、180元の支払いで10%割引。

 目標を達成し免税店に戻る。免税店は1830分までで、佑滋を引き取り1820分に「三民書局」地下1階で待ち合わせ。まず地下1階の児童書と玩具売場を一回りして最上階へ上がり、台湾鉄路の厚紙切り抜き組み立て本を眺め、日本の鉄道旅行ガイドをめくる。北海道から沖縄まで各地の鉄道が写真入で紹介、駅弁に切符の種類や時刻表の読み方など真面目に取材。ただ紙質がちょっと薄い。日本の物は中国語表記にかかわらず正確に説明できるが、例えば台湾の鳥を日本語で説明するのは難しい。じっとできなくなってきたので、「いいもの」を探しにコンビニの萊爾富(ハイライフ)へ。セブンイレブンと作りが違いアイスは見えないが、代わりに台湾鉄路の自強号の玩具を発見。勿論佑滋は欲しがるがこういうものは「たんたん()に買ってもらおう」と言って、コンビニを出て免税店へ向かう。18時を回ると入口ドアにはシャッター。入れ違いは困るので本屋の地下1階に戻る。新幹線の絵本を見て、動物の組み立てパズルにも興味を示す。次に数字やアルファベットを覚える玩具を見ると、歳の変わらない台湾の女の子がなにやら話し掛ける。そうこうしているうちに妻が横を通って合流、まず母を探して自強号の玩具を購入249元。

 

3. 夜の永康街

 

 先ほどの信号を渡り民権復興路口のバス停へ行くと、すでに夕暮れラッシュで多くの乗客がバス停に立ち、数珠繋ぎのバスが信号の変わる度にレーンに並ぶ。数え切れないバスを見るが、結構満員だが505番は来ない。別の番号のバスが何回も通ると三重に暗い気分だが、ようやく1850分、かなり空いた大都会客運(バス)505番に乗車。民権東路の専用レーンを走るが交通量が多いと全然進まない。建国北路の高架道路をくぐり松江路との交差点北側には煌煌とした行天宮。元来は三国志の関羽を祀るが、台湾では商売の神としても厚い信仰がある。ここで左折し松江路を南下。渋滞は減るが車内には案内表示も放送もない。どこで下りるかは停車するバス停の表示が頼りだが、バスが速くその上暗くて少し緊張。地下をMRTが走る忠孝東路を横切ると新生南路へ入る。仁愛路・信義路と交差して次は金華新生路口でボタンを押して1930分下車、バス代は15元×345元。東側は台北市内で一番大きい大安森林公園だが、永康街へは西側の金華国中(中学校)の大きな校門前から塀沿いに住宅街の中を進む。道路の両側はびっしり乗用車が駐車し、対向車が来ると避けづらい。突き当たり北側が永康公園。もう1本西側の通りを南に少し下がった所が目的地の「金鶏園」で1945分到着。

 このあたりは永康街の南外れ。その分競争に勝ち残りうる台湾グルメの世界が別の形で広がる。1階は月餅を販売し厨房を兼ね食事は2階。ベビーカーは店員が階段で運ぶ。座席数は多くメニューが漢字で印刷された注文書に数を記入。ネット「台北ナビ」で調べた価格に比べ少し値上がりしているが、蝦仁焼売120、蟹黄小包140、小籠包子80、菜肉蒸餃90、蝦仁蒸餃120、鮮肉蒸餃80、蝦仁粥80、酢辣湯40、冬菇飯90、豆沙大包30、蓮子銀耳40で合計910元。空腹なのでたくさん注文するが、テーブルに並ぶと本当に食べられるか心配になる。最初に来たのが蝦仁粥、マニラ(1999)で食べた広東粥はご飯の粒がなかったが台湾粥はご飯の粒が残る。各自醤油や辛い薬味で味付け。酢辣湯は少し辛いスープで、1945年以降に外省人が持ち込んだもの。一緒に食べるとおいしい。冬菇飯はシイタケ定食でシイタケの煮方が適切。ニンニク味の野菜に和え物つき。ご飯は少し残す。続いてセイロがやってくる。蝦仁焼売はエビがしっかり入る。蟹黄小包はカニ肉と味噌入り、小籠包子は昨年の群香品より皮がしっかりもちもち。薄皮にスープが詰まった昨年の雰囲気はないが食感の好みの問題か。蒸餃3種とも食べやすく気がつくとなくなる。佑滋には豆沙大包でこれは大きな餡饅頭、他に蝦仁蒸餃を喜んで食べる。お茶は少し香りがするが食が進む。台湾にはいわゆる居酒屋がなく、ひたすら食べる系。離れた席に「台湾ビール」の空き缶があり、筋向い南側のセブンイレブンで買ったものか?前回の群香品もそうだが、お茶は好きなだけ無料で飲めるがお酒(ビール)はメニューになく食事だけ提供。ただ酒は自分で持ち込むのは可能。食事にお酒が含まれないのは料理自体の追究という観点からは頷ける。日本ではお酒を勧める一方、制限時間を設けラストオーダーと称し、客の回転を上げる経営手法が見られるが、お酒と料理の組み合わせが必然的なのかどうか、別の視点も考えられる。

 でも佑滋の関心は食事より先ほど買った自強号の玩具。なぜか台紙にネジ止めされ、外してほしいがドライバーはなく、妻が店員に相談すると、店主がドライバーで外し感謝。中国製でよく見ると実際の自強号とは相違点が多いがそれは追求せず。扉が開き汽笛も鳴る。最後はデザートの蓮子銀耳。器は上げ底でなく台の底まで詰まった下げ底で蓮の実と白キクラゲが甘いシロップに埋まり美味。日本のみつまめとは何かが違う上品さ。20301階に降り勘定すると、日本語紹介も幾つか掲示。店員のお兄さんがWBCでのイチローの打撃について日本を褒める。

台北車站へ戻るべく永康街を北上。永康公園では多くの人が一緒に身体を動かす。夜も遅くなって賑わうのが台湾風か。昨年行った群香品前を通り、大通りの信義路へ。道路中央に安全地帯のバスレーン。2045分、すぐに信義幹線の台北車站行きの大有巴士(バス)乗車。昨年はデモで経路が変わったが、今年は渋滞もなく快調に飛ばす。ライトアップされた中正紀念堂を南に見て右折し中山南路を横切ると、西側には景福門(東門)があり後ろが国民党中央党部(本部)。日本時代に日本赤十字社があった場所、建物正面に大きく輝く青天白日の党章。党歌を「中華民国」の国歌とし、日本時代の資産を接収、かつては世界一の金持ち政党で、世界最後のファッショ政党とも言われる中国国民党だが、2000年に野党となり財政的に苦しく、機関紙の「中央日報」は停刊、職員給与遅配も発生。ただ、与党の民主進歩党の方が給与は安いという指摘もある。

主席(党首)で台北市長の馬英九の意向で、本部建物はエバー航空を持つ長栄グループへ約80億円で売却予定。本部売店が本来禁止の人民元と台湾元の違法両替を行い営業停止という報道もある。大陸反攻がスローガンだった国民党だが、時流変化は人民元(大陸)を必要とするのだろうか?ただ、現総統の陳水扁と同年齢で1950年香港生まれの外省人、馬英九の人気は北部では高く次期総統候補の1人と目される。ただ政治問題は日本での報道だけでは不十分。『台湾したたかな隣人』酒井亨、集英社親書2006などが参考になる。

正面は日本時代建築の総統府で中央塔がライトアップ。右折し公園路へ入って北上。東側は二二八和平公園で、西側は台大医院。停車したバスが急発車。中央ステップで乗り込んだ乗客と荷物が転倒。十分速いのだから急がなくてもよい気がするが、特に非難の声は上がらない。台北車站は大通りの忠孝西路の1つ手前、青島西路に入り停車し21時下車。大人3人で45元。佑滋をベビーカーに乗せ華華大飯店へ。臭うのは現在台湾を代表する食材の1つ、でも元来は大陸生まれの臭豆腐。ホテル手前の全家便利商店Family martで水1リットル35、台湾ビ―ル500cc41×2、ババロア25、練乳プリン28、スポンジクリーム28で合計198元。手持ちのカバンに入れると袋代不要。腹具合はちょうどよくなり、入浴の後でビールを飲んで23時就寝。

 



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