4. 台北動物園

 

 330日は遅寝の佑滋の起床が8時、起きると昨夜買ったデザートを食べる。天気良く今日の予定は台北動物園。帰りに戻ると楽なので延泊に決め9時にフロントへ下り手続きし3200元。明朝の朝食券を4枚もらう。そういえば今朝の分は3枚しかないと言うと、スタンプを動かし1枚余分に発券。その足で隣のドトールコーヒーで朝食。朝食セットはホットドッグまたはロールパンにサラダで茶色の固ゆで卵つき。朝からたくさんの野菜が採れる。大人はコーヒーで佑滋はアップルジュース。宮崎駿の映画音楽がBGM

 10時に出発し台北車站へ。動物園まで大人35元×31025分に乗車し35分に忠孝復興。昨日の中山国中と反対方向の動物園行きの木柵線に乗り換え。無人運転で先頭車両に乗ると前方が良く見える。高架の路線を南下。最初はビル街の間を進む。車両が小さく科技大楼で東に直角に曲がる。六張犂で基隆路を越えると山が近づき山岳トンネルも通過。斜面には沖縄の亀甲墓に似た形の墓地が並ぶ。植生の違いか木の葉の厚さか、山の緑色が濃い。トンネルを過ぎると木柵。木柵とは文字通りの意味で、大陸からの移住者が築いた山地系原住民に対する結界。台湾では先住民といわず原住民というのは、「先」は死を表し、先住民には現在は絶滅した語感があるため。

11時に終点の動物園下車。地上に下りると気温が上昇。朝は冷え込んだソウルの春とは大きく違う。日差しが強く早速路上で佑滋の帽子購入150元。ゲートで入場券購入。大人60元×3。入口で半券をもぎる。入った所に無尾熊(コアラ)館があり見始め。平日の動物園は小学校や幼稚園の校外学習・遠足で賑わう。続いて参観歩道を隔てた反対側の教育中心(展示館)へ。入口前でテナガザルが水面の向こうで鳴きながら遊び続けるのを眺める。気温が高くなり展示館の冷房が涼しい。台北動物園は日本時代の民国3(1914)年に市内の円山地区に開設以来の歴史。もう少し沿革について知りたいが、佑滋が外に飛び出し後を追いかける。

 園内は広く各展示の間は相当歩かねばならないので、佑滋をベビーカーに乗せて押す。展示は自然石を大胆に組み合わせゲートを作り、視野を区切る配置を採用。後ろを振り返り妻と母がついて来るか確認しながら進む。台湾動物区では、台湾固有の台湾黒熊・台湾野猪・台湾猿猴・雲豹・梅花鹿・オオカンムリワシやフクロウ。日本と共通する要素もある地味な展示だが、まず足元を見ることは重要だし、厳しい台湾の山岳地帯へ入る困難さを思えば率直に有難い。あちこちに休憩スペースがあり、休日の賑わいが知れる。

 次は昆虫館。植生が変わると昆虫が変わる。蝶が放される温室は日本にもあるが、かなり規模が大きい。でも小さい昆虫の識別は難しく「どこにいるの?」とケースを空しく眺める。茎や小枝の形をした擬態の昆虫は大きくてわかりやすい。喉が乾き水500cc15元で購入。出口近くで昆虫研究者の紹介があり、その筆頭に九州大学農学部での昆虫分類で業績を上げ、初代九州大学山岳部長にも就任した江崎悌三先生の肖像を見つけ感慨にふける。異郷で知った名前に会うと不思議な縁を感じる。

 ここまで見て12時を回り昼食休憩時間。コアラ館近くのスナックコーナーまで戻る。台湾製アイスクリーム25×2、包子(肉まん)15×2、肉粽(チマキ)25×3155元。アイスクリームは最初凍っていたが少しこじって食べる。でもその頃に台湾のサトウキビ列車展示を見ていた佑滋がやって来て一人でどんどん食べる。遠足の子供たちは雨水を地下に貯めたタンクから井戸水ポンプで汲み上げ遊ぶ。大人は過去の生活に思いを致す。子供は何を感じるのだろうか?

 一通り食べると佑滋はまた勝手に動き出すのでついていく。サトウキビ列車は台湾中南部で活躍したディーゼル機関車に貨車と客車を連結するが、乗車は禁止。かつての台湾は日本時代に生産が拡大した米と製糖が二大農産業だったが、糖価暴落と競争力減少で後者はハワイ同様過去のものになり、台湾農業は果物や嗜好品(例えばビンロウ)栽培が中心となる。ハワイのサトウキビ列車はマウイ島の観光資源の1つだが、台湾ではどうだろうか?

 その先の児童動物園区を子供達の間を縫って一回り。ウサギ・猪・水牛・ラバ・ロバ・カモ・オウムなど身近な動物が多い。作業員が機械で雑草刈り。一周して戻ると妻と母が探していたので、事情説明し午後の予定を相談。暑くなりそのまま歩くと広大な動物園では大変なので、まずコアラ館横の列車総站から連結バスに乗って奥まで上がり、動物を眺め下りてくる計画にする。全部見なくてもいいだろうという気楽な考えだったが、予定は未定で閉園まで居続けることになる。13時に行動再開。

 列車の行列は子供達で長いが、1本でかなりの人数を運ぶためすぐ進む。15元だがお釣りは出ないので小銭を探す。改札後佑滋と2人で並んで座る。動物園の縁沿いの管理道路を登る。園内の木々に邪魔され、それほど中の様子はわからない。妻の席からは割合見えて、母は日本語勉強中の中高生に囲まれ、自分の名前を書いて教えて国際交流に努める。列車鳥園站下車。鳥園こそ入らなかったが、ゾウガメを見ながら坂を登り、両棲爬虫動物館へ。カエル・トカゲ・亀・蛇と充実した展示が続く。一番上のペンギン館で王様ペンギンの群れが迫力。1週間前に行った神戸の王子動物園は2羽だけで。

出たところで14時過ぎにトイレ休憩。包子15、なぜか明治スーパーカップアイスクリーム30元。コアラの餌のユーカリが植わり、温帯動物区ではアメリカ野牛にカワウソや狐。非州(アフリカ)動物区ではライオン・キリン・ゾウ・サイ・カバと動物園らしい所で広いスペースを使う。キリンの足元を亀が進む。1520分カバ広場で休憩。ポテト30、アイスコーヒー40、オレンジジュース40、水15、コーラ30元など。石畳の路面を水面に見立て、石でできた頭と背中だけ出したカバの背中に乗ったり、口を開けたカバの口の中に首を入れ、シマウマの背中に乗ったりできるようになって記念撮影。

 ここまで来るとあと少し。澳州(オーストラリア)動物区にはカンガルーとヒクイドリにエミュー。沙漠動物区にはラクダ、亜州(アジア)熱帯雨林区は熱帯らしい植生の中でアジアゾウにオランウータン、マレーグマにマレーバク、大テナガザルに花豹と一番この動物園の立地を生かす展示なのかもしれない。展示と展示の間はベビーカーに乗る佑滋だが、目当ての動物が見えると下りて確認するので速くは進まない。元気がもつのが不思議。

 最後の展示が夜行性動物館。照明を落とした展示室で夜行性の鳥類や小動物・魚類を展示。佑滋の好きなフクロウがいたので、ここにも入ってよかったようだ。あと台北動物園で最近の話題は、大陸の提案で来るかもしれないパンダで園舎も新築中。台湾ではここと台北郊外のサファリパークの六福村が獲得の名乗りを上げたが、331日の政府決定はワシントン条約と野生動物保護法に則り審査。受け入れ申請箇所の設備が不十分で、保護を受ける動物は生息地で飼育するのが世界の潮流と理由をあげ、これらの状況が改善するなら輸入できる可能性もあるとしている。17時の閉園時間が近づき入口へ向かう。遠足の子供は帰り、だいぶ静かになってきた。北側尾根の向こうに信義新都心に聳える高さ508mの高層ビル、台北101(台北金融大樓)の尖端部分が飛び出す。気がつくと1日がかりの動物園だが、これだけ広ければ全部回るのは大変だ。駅隣のZOOモールに行くが、特に買うべきものもなく、1710分に新交通・動物園站から台北車站へ忠孝復興乗り換えで戻る。1750分到着で35元×3

 

5. 夜の台北

 

 ホテルへ戻る前に台湾バナナを買いに新光三越へ。地下1階でヨーグルト・パン213、バナナ64、に何を買ったがわからないのが155元。地下2階のフードコートへ行くと去年のおにぎりはなかったが、台南発祥の担仔麺2つを注文して100元。香菜が入り独特の風味。麺は太いのとビーフンの二種類。それまで由来を知らなかったビーフンだが、台湾が本場で作り方は『台湾好吃大全』平野久美子、新潮社2005に詳しい。この本には小籠包こそないが、台湾の風土に密着し育まれた食文化を丁寧に紹介しお勧めの一冊。

 19時に華華大飯店に戻り入浴。入浴後妻と2人でホテル外側を一回り。夜の街をそれほど危険なく歩けるのも、台湾の持つ大きな魅力。1つ北側の開封街と重慶南路の角にあるのが、昨春行った台北から台鉄で一駅基隆寄り、松山の夜市で買った福州世祖胡椒餅の支店。3つで120元。そのまま新光三越の方へ懐寧街を横切り、台湾独特のアーケードと歩道を兼ねた亭仔脚の下を進む。亭仔脚は『別冊宝島127謎の島台湾』宝島社1991所収の「台湾の街の作り方」郭中端・堀込憲二によると、「全島の町の隅々にまでわたって存在している点で特異な存在」で、「亭仔脚の空間は各家の私有地であり、そこを公共に開放することに大きな意義」がある。そういう意味で基準となる建物が変わると段差が生じる当然の事情があるが、前回の旅行では調査が至らず、「八重山の先」で文句混じりの文を書いてしまった。今回よく見るとそういう箇所も確かにあるが、隣家のものと傾斜を適切につけ、高さを揃える所も少なくない。

 店の名前を記述できなく残念だが、店頭に並べた串刺しの食材を炭火焼している店を見つける。臭豆腐の串を見つけ食べたくなり、どうしたらよいか聞くと、プラスチック製のバットに食材を取って出せばよく、早速臭豆腐に青唐辛子、豚肉と野菜の串などを選ぶ。豚の血を固めた練り物も並ぶ。すると車椅子の若い女性がやって来て、幾つか選ぶと「日本の方ですか?」と話しかける。普段着なので旅行者とわかると少し驚いたようだが、「ここは本当に美味しい!」と上手な日本語。ついこの前まで日本人の友人が来ていて、わざわざ車でここまで買いに来るらしい。もう1つ向こう側の通りのチマキと麺線もおいしい。そちらはガイドブックに出ているが、この店は出ていない。良いことを聞いた。そうこうするうちに店員がタレをつけ胡椒を振る。頼んでない串も入れた気もしたがまあいいか。100元。南側の漢口街へ行き、当該の「王記府城肉粽」も発見。日本に帰ってからネットの「台北ナビ」で調べると「府城というのは都心の意味があって、台湾では古都・台南を指します」という訳で、台北で味わえる台南の味。北部と南部の粽の違いは「北部のちまきは、あらかじめ調理した具ともち米を、笹の葉にくるんでセイロで蒸しあげるのですが、南部のちまきは、生のもち米と、生の具を葉で包み、熱湯の中でぐらぐら煮て作るのだそうです」台北市内には何店かあり、今回買った『新個人旅行台湾』では、南京東路の店が載り帰国後に気がつく。肉粽2個持ち帰りで100元。奥に座席があり、入口で粽を蒸している。漢口街の北側がいつもビールにヨーグルトを買う全家便利商店でビール3117元を購入。

 2120分にホテルへ戻り、4人で食事の続きとビール。臭豆腐も煮込みでないと臭わず、締まった豆腐の美味しい食感。他の串もタレの味がしみる。胡椒餅も『台湾好吃大全』に載っている有名食品だが、去年と違って味を知れば感慨というより確認。でも具のネギと胡椒、肉の味が香ばしい皮に良く合いやはり美味しい。肉粽は台北動物園で食べたものとは値段だけでなく中身も味も違う。ラードと赤味の混じった豚肉・椎茸・卵の黄身・乾しエビ・落花生などが入り濃厚で贅沢。わざわざ車で買いに来るのにも納得。台湾バナナも美味しい。だいぶ疲れてきたので2230分に就寝。



中盤2へ続く |


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